レクター博士も贔屓にしたサンタ・マリア・ノヴェッラ薬局

サンタ・マリア・ノヴェッラ薬局は、フィレンツェに所在する、現存する世界最古の薬局と言われています。

起源は1221年フィレンツェに移住してきたドミニコ会の修道院の修道僧たちが薬草を栽培して薬剤を調合していたのが始まり。この修道院は後のサンタ・マリア・ノヴェッラ教会となりました。

今日に至っても800年以上の歴史を持つ伝統を守り、香水、キャンドル、石鹸、ボディーケアなどの製品を昔からのレシピに基づいて作り続けており、高品質な商品は世界中の人に愛されています。今やフィレンツェで一番有名な買い物スポットとなっており、多くの観光客が訪れています。

このお店がトマス・ハリスの小説『ハンニバル』、そしてアンソニー・ホプキンスがレクター博士として主演した映画『ハンニバル』にも登場します。

お店はフィレンツェの中央駅から徒歩５，６分。

地図の丸印のところで、スカラー通りに面していますが、サンタ・マリア。ノヴェッラ教会の広大な敷地の一部だったことがわかります。

玄関から入ると6,7人並んでいましたが、数分待ちで入れてもらえました。

待っている間に、ジェラートのサービスがありました。

『ハンニバル』では次のように入口から奥に続く廊下の場面が描かれています。

＜まだ早い時刻に、ハンニバル・レクター博士は騒々しい街路からこの世で最も香しい場所の一つ、ファルマチーア・ディ・サンタ・マリーア・ノヴェッラに入った。ここは七百年余りの昔、ドメニコ会の修道僧たちによって創られた薬舗である。奥の内扉まで伸びている廊下で博士は立ち止まり、両目を閉じて顔を仰向けると、名高い石鹸やローションやクリームの芳香、作業室に並ぶ各種の原料の香りを心ゆくまで吸い込んだ。＞

入口からサポーネ・ディ・マンドレル（アーモンド石鹸）の清潔感溢れる香りに包まれます。

　店内に飾られている彫刻、シャンデリアの美しさなどレクター博士の眼鏡にかなったことだけはあります。

『ハンニバル』からです。

＜ここでは空気は音楽なのだ。まずは本物の龍涎香（りゅうぜんこう）、麝香（じゃこう）、海狸香（かいりこう）、それに麝香鹿のエッセンスからなる基音がゆきわたっており、その上に抽出を待つ乳香の青白い涙がたゆたい、黄色いベルガモット油、白檀、肉桂、ミモザ等の香りが渾然となった調べがのびやかに響きわたっている。＞

少し人が多すぎますが、しばしの間暑さを忘れて芳香に包まれておりました。

お土産にいくつか石鹸を買いましたが、商品を選んで番号札をもらってキャッシャーに行くとこのような漢方薬店のような棚から商品を出してくれました。

香しい石鹸をこのような袋に入れ、ついでに試供品のようなものまで入れてもらいました。

フィレンツェはレクター博士の足跡を追って巡りました。