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谷崎潤一郎『細雪』では、京都での花見が最も大切な家族の行事として描かれています。 <毎年春が来ると、夫や娘や妹たちを誘って京都へ花を見に行くことを、ここ数年来欠かしたことがなかったので、いつからともなくそれが一つの行事のようになっていた。> 小説で花見に行くメンバーは貞之助、幸子、雪子、妙子、悦子であり、長姉の鶴子は参加していません。 <明くる日の朝は、先ず広沢の池のほとりへ行って、水に枝をさしかけた一本の桜の樹の下に、幸子、悦子、雪子、妙子、と云う順に列ならんだ姿を、遍照寺山を背景に入れて貞之助がライカに収めた。> 『細雪』は谷崎潤一郎自身の生活をモデルとしており、谷崎が写した小説そのものの花見の写真が残されています。 左から重子(雪子)、信子(妙子)、恵美子(悦子)、松子(幸子)。 <あの、神門を這入って大極殿を正面に見、西の廻廊から神苑に第一歩を蹈み入れた所にある数株の紅枝垂れ、―――海外にまでその美を謳われていると云う名木の桜が、今年はどんな風であろうか、もうおそくはないであろうかと気を揉みながら、毎年廻廊の門をくぐる迄はあやしく胸をときめかすのであるが、今年も同じような思いで門をくぐった彼女達は、忽まち夕空にひろがっている紅の雲を仰ぎ見ると、皆が一様に、「あー」と、感歎の声を放った。この一瞬こそ、二日間の行事の頂点であり、この一瞬の喜びこそ、去年の春が暮れて以来一年に亘って待ちつづけていたものなのである。> と谷崎は桜の美しさを見事に描写しています。 美的センスを誇る市川崑監督は1983年公開の映画『細雪』で京都の花見の様子を、長女鶴子を加えた四姉妹の見事な映像に仕上げました。 一方、『平成細雪』で花見のシーンに対応した映像は紅葉の美しい宇治の興聖寺参道でロケされたシーン。撮影時期が秋であったことが影響したのでしょうが、春の桜に対抗する秋の日本の美を代表する紅葉の下の四姉妹が映像化されていました。 更に和服姿の美しい四姉妹に対抗して、最終回の第四話では左京区にある隋心院で、「平成」を意識した洋服姿でお茶を飲む四姉妹。 映画『細雪』(市川崑監督)以来35年ぶりの映像化となった『平成細雪』は市川崑監督へのオマージュと言ってもいい作品でした。
by seitar0
| 2023-07-29 00:10
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