平中悠一が関西学院大学在学中に「文藝」1984年12月号に発表した短編『She’s Rain』にもユウイチとレイコがデートした舞子あたりのシーサイドのレストランが登場します。
高校生という設定もあり、レイコが「面白そうな店、あたし知っている」と誘った店に二人は電車で向かい、ある駅に降ります。
<電車を降りると。そこはいっぱしの田舎町だった。夕方の漁港で人が働いていた。僕の知らない場所で、僕の知らない人が、おそらく僕のことなど知らないままに、一生懸命に生きている。>
これはおそらく塩屋漁港。1980年代は田舎町の漁港の雰囲気がまだ残っていました。
<店は海辺にあって、海に向かってテラスが設けてあった。西海岸風のつくりだった。海は、夕方の瀬戸内海特有の色あいをしている。沖を、ヨットなんかが通っていた。>
ここまで読むと、垂水駅と舞子駅のほぼ中間にあった、あの伝説のカフェ「ウエザーリポート」かと思ってしまうのですが、映画『She‘s Rain』で白羽弥仁監督が選んだ店は、舞子駅をさらに西に進んだところにあるレストラン「フィエスタ」でした。

フォルクスワーゲンに乗ったユウイチたちがフィエスタの駐車場に入って行きます。
国道2号線の右側を山陽電鉄とJRが並行して走っています。

小説にも登場する海に向かって設けられたテラス席。
このイタリアンレストラン「フィエスタ」は現在も営業を続けていて、訪ねてみました。
こちらは映画の一場面。
撮影当時、オープンテラス席だったところは、伺ってみると屋根がつき室内に改装されていました。
上の写真は神戸公式観光サイトより
<「ほら、みて、海!」 瀬戸内海の夕暮。そんなたいして綺麗なもんじゃないんだろうけど、僕達みたいな街の子供には、やたら素的に思える。テラスの白い手すりに雨の雫がのこっている。西風が、レイコの髪をなでる。音楽は”The Whispering Sea”に変っていた。>
テラス席はなくなりましたが、今も素晴らしい景色が堪能できます。

フィエスタの店の横から海岸に降りることができました。
映画の撮影は1992年ですから、まだ明石大橋は開通しておらず、工事中だったでしょう。