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田辺聖子さんの自伝的小説ともいえる『虹』から、続けます。 主人公・坂野は金物問屋の労働争議に加担したことから、離職せざるをえなくなり、一緒に暮らす母親に頼る生活ですが、なかなか再就職の目途もつきません。 坂野の趣味は絵を描くことで、少女の頃、一度は画で身を立てたいと思ったほど。母からは、「そんなひまつぶし止めなさい。一文の金にもならんのに」と言われるのですが、田辺さんの執筆生活をモデルにしているようです。 絵の才能を生かして内職で人形マスク作りをしていたところ、評判も良く、追いかけて注文ももらいます。そのような縁で、試験的に描いた泥絵の絵皿を持って大阪の南森町の人形問屋を訪ねると、その主人から「あなたの絵なら売れます。いいセンスがあります。色があります。―そして愛情が溢れています」と褒められるのですが、面白いことに、これは田辺さんの小説を評したような誉め言葉。 <「坂野さん、ひとつね、自由に気楽に描いてみませんか。描かしてあげますよ。アップリケののれんや額入りの壁飾りもしてみてごらんあさい。委託で売ってもいいし、買取ってもよろしいが。なんならそこを手伝ってもらってもいいな」> と、ようやく坂野に収入の道がみつかるのです。 <お金がたまったら油画を買いたいナと値段だけみるつもりで、西宮までのりこして商店街をぶらついた。そして果物やの角を曲ったところで勤務最中の母に出合ったのだ。母は思いがけぬところでわたしにあったので、甘酸っぱく笑み崩れながら、暖かい風のように近よってきた。意外にちいさく痩せちぢまり、白昼のむざんな陽光のもとではしわが目立った。残骸のような母の姿にわたしはドキッとなったが、母の声はやっぱり張りのある若い、美しい声なのだ。> しかし残念ながら阪神淡路大震災で倒壊し、現在はアーケードもなくなり、お店も少なくなりました。 <けうとい、この屍衣のような母の黒い仕事着は、わたしは大きらいだ。はやくこれを脱がせてやりたいのだ。―が、いまわたしは気が大きくなり自信がついてきてなにをみても嬉しかった。わたしでなければいけない、という仕事がみつかったのだ。わたしの愛とわたしの心と、わたしの手の要る仕事が。「母ちゃん…奢ろうか?」> 当時の西宮市の水道局員の制服だと思うのですが、ヅカファンの田辺聖子さんの趣味にはあわなかったようです。 <わたしは母の鞄をもって歩いた。鞄は重かった。手垢にまみれたやくざな銅貨がザクザクはいっていた。母もわたしもお昼はまだだ。わたしたちはパンやリンゴを買いこんで、武庫川の堤へいった。風がないので、春先のように暖かい。まばらな松林を背に坐った。母は横坐りにわたしは長い足と短い足をこわれた人形の足のように可愛いくならべて。枯草はほのかな地熱をもっていた。> ![]() 武庫川堤防の松並木はその頃からまばらだったようです。 <空気は澄んでいた。橋上を、色あざやかな電車や車が糸でひっぱられるように滑らかに動いていた。水あさぎの空に、あわあわしい雲が流れている。清澄な川の水はたゆたゆと丸くふくれあがり、砂原のうえに透明にひろがって雲を浮かべていた。> ![]() しかし、この文章、ひとつひとつ使われている言葉、さすが田辺さんとうならせるものです。 この作品で大阪市民文芸賞受賞を受賞し、本格的な作家活動に入ったというのもよく理解できました。
by seitar0
| 2020-11-20 20:19
| 田辺聖子
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