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細井和喜蔵『奴隷』から、続けます。 浪華紡績西成工場で愛し合っていた女工の菊枝が突然いなくなり、失意にくれた主人公・江治は、香櫨園からラジューム温泉のある苦楽園まで歩いて登ってきます。 ![]() <彼は近頃ひどく体力が衰えて少しの坂道にも疲れを覚ゆるようになった脚を、とある生え込みに休めて心持ち汗ばんだ顔をハンカチで拭い、眼の下に続く蘆屋の絶景を木の間越しに眺めおろした。> ![]() <そうして幸い懐に一円ほどおあしが有ったので、来た序でだからラジューム温泉を一風呂浴びていこうかと思案していると、一台の自動車が唸りながら坂道を登って来た。ガソリンの臭いがさっと鼻を衝く。> ![]() <(随分な坂を登るなあ)彼がこう思って感心していると、自動車は其処でぴったり停まって了い、詰襟の運転手がひらりと身を跳らせて先へ降りた。江治は見ることもなしに其方を向いて内裡の客が出て来るのを待った。「此処までしか登りません。」運転手がこう言って扉のハンドルへ手をかけた。その瞬間に、江治はがくりと脅えた。彼の心臓はくるうような烈しい動悸が狂乱して波打つ……。> 苦楽園温泉開業当初は客を馬車で運んでいましたが、その後、大阪の勧業博に出品されたフォードを苦楽園の開発者・中村氏が購入し、自動車で乗合客を運んだそうです。 ![]() 何とそこから降りてきたのは、西成工場の工場長と行方不明になっていた菊枝でした。女工時代は貧しい身なりだった菊枝が、令嬢か女優みたいな艶やかな姿で、指には宝石入りの指輪が光っていたのです。 <「菊枝さん!」江治は矢庭に生え込みから飛び出して二人の迹を追っかけた。菊枝はかつて心を捧げた男といま体を許している男との間に立って極度に困る。そして良心の閃きと一緒に、「許して江治さん!」と懸命に叫んだが彼女の理性はこんがらがって了って完全な言葉にならなかった。> まるで『金色夜叉』の一場面、江治は間貫一のように高利貸しにはならなかったのですが。 西成工場の工場長に囲われていた菊枝は、『奴隷』の続編、『工場』では、鐘ヶ崎紡績をやめ浪華紡績西成工場に戻った江治に再会し、許しを請い、最後には夫婦となるのです。 自伝的小説とはいえ、このストーリーは創作だったようです。 細井和喜蔵は大正9年23歳の時上京し、東京モスリン紡績亀戸工場に就職します。そこで女工で労働組合の活動家でもあった「高井としを」と出会い、大正11年に結婚します。しかし、結婚生活わずか3年で、和喜蔵は肺結核と腹膜炎により大正14年に亡くなりました。 和久田薫『女工哀史の誕生』によると、和喜蔵の空想の八部を占めるものは恋愛であり、現実生活の苦しさから空想の世界に逃れようとする潜在意識の働きだったかもしれない、と述べられています。その結果、自伝的小説『奴隷』『工場』の中で、ドラマチックな恋愛物語を創作したのでしょう。 和久田薫は内外綿紡績(浪華紡績のモデル)西成工場で、菊枝のモデルとなった人物を次のように紹介しています。 <ところが手記「大阪」には、久しぶりに自分が働いていた工場地帯を訪ね、元の職場だった内外綿会社第一紡績工場に行った時、古参の職工長から「小川花」という女工が国元へ一時帰っていて、再び工場へ戻ったもののすぐに亡くなってしまったという話を聞き、「それが僕の初恋の少女お花なのだ。感慨無量である……」と書いている。おそらく小川花という女性が彼の愛した人だったと思われる。> ![]() プロレタリアート文学作家の細井和喜蔵は相当なロマンチストでもあったようです。
by seitar0
| 2020-10-18 12:11
| 苦楽園口
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