帝國酸素の本社は大岡昇平が翻訳係として入社した昭和13年には明石町38番地にありました。
建物は現在も神戸大丸別館として旧居留地38番館のプレートを掲げ、外観のみ保存されています。

大丸神戸店の東南の角(赤丸印)になります。

この建物はW.M.ヴォーリズの設計で1929年にナショナル・シティバンク神戸支店として建設されました。1階をシティバンクが使用、2階には独逸染料、バイエル薬品が入居、3階に帝国酸素が入居していましたが、その後2階のドイツ系2社が退去し、2階、3階を帝国酸素が使用していたそうです。
大岡昇平『酸素』では日仏酸素の本社は第五章で次のように描かれており、旧居留地にあったことは同じですが、当時の帝國酸素の本社ビルとは敢えて変えたようです。
<日仏酸素株式会社の事務所は、旧居留地内の赤煉瓦の建物を占拠していた。元カナダの商館であった三階建ての建物の地階はカウンターを廻らして、神戸姫路地方の販売を受け持つ神戸支社が占め、二階が重役室及び本社事務所、三階が技術部、製図室、倉庫になっていた。>
旧居留地のカナダの商館という建物は現存しておらず、どの建物がモデルとなったのかは不明ですが、内部の様子は帝國酸素本社を模したのかもしれません。