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谷崎潤一郎『細雪』は、倚松庵での暮らしを題材にして、昭和11年秋から昭和16年春までの蒔岡家の4人姉妹の日常生活を綴った作品です。 丸谷才一は、戦後の日本の小説の中で最も多くの読者を得た作品と評価し、その理由について次のように述べています。 <かつての安定していた世界、ついこないだまでは自分もそのなかに住んでいて、そして今はもう外国のように、あるいは外国以上に遠のいてしまった世界、それをこれだけ精細に 、卓抜な筆力で描き、再現してくれたこと ―そのことがおそらく『細雪』があれだけのベストセラーとなった第一の理由であろう。と言うとき、ぼくはこの長編小説が終戦直後にしか受け入れられないようなたちのものだと述べているのでは決してない。かつての日本へのなつかしさは、日が経つにつれていよいよ増して来ているし、それは何も反動的と言ってそしらねばならぬような心情ではない。もっと自然な、いわばわれわれの過去への思慕なのである。>(丸谷才一・『細雪』について) まさに私が『細雪』が好きな理由が述べられていました。 阪神間モダニズムの時代の、当時は中産階級といわれた人々の優雅な生活が描かれているのですが、その時代の見合いの場所として登場するのがモダニズムを象徴する建物としても有名なオリエンタルホテルとトーアホテルです。 冒頭の仏蘭西系のMB化学工業に勤める瀬越との見合いの場所がオリエンタルホテルでした。 <それも、井谷が双方をただ何となく招待すると云うかねての約束に従って、努めて見合いのような感じを起させないようにと云う条件附きで、当日時間は午後六時、場所はオリエンタルホテル、出席者は、主人側は井谷と井谷の二番目の弟の、大阪の鉄屋国分商店に勤めている村上房次郎夫妻、―――この房次郎が先方の瀬越なる人の旧友であるところから今度の話が持ち上った訳なので、これは是非とも当夜の会合に欠けてはならない顔であった。> (写真はホームページより2025年に完成予定の六甲山サイレンスリゾートの全貌 https://www.premium-j.jp/japanesesenses/20190820_2831/#page-1) オリエンタルホテルに戻りましょう。 オリエンタルホテルは明治3年に神戸外国人居留地79番地に開業した日本最古級の西洋式ホテル。明治20年にはオーナーが変わり81番地に移転しています。 更に、明治30年にはアーサー・ヘスケス・グルームおよびエドワード・ハズレット・ハンターらの所有になっています。 ![]() 上は明治14年の地図ですが黄色の丸印が居留地79番地のオリエンタルホテル発祥の地です。 そして明治40年に神戸港メリケン波止場近くの海岸通に面する6番地に移転しました。黄線で四角く囲んだ所が、6番地です。 風見鶏の館を手がけた建築家ゲオルグ・デ・ラランデとヤン・レッツェルが共同設計した3代目となる建物は、昭和20年6月の神戸大空襲で被弾して半壊し、復旧できずに取り壊されましたが、この場所で昭和23年に営業を再開し、昭和39年に25-26番地に移転しました。 『細雪」の蒔岡家の雪子の見合いは、昭和11年の出来事として描かれていますから、海岸通り6番地のオリエンタルホテルで執り行われたことになります。 ![]() 昭和12年の地図を見ると黄線で囲んだ所にオリエンタルホテルと書かれていました。 見合い当日は車が遅れて、幸子たちは30分ほど遅刻してオリエンタルホテルに到着します。 <時間が遅れたので、ロビーでの紹介が簡単に済むと、直ぐ八人が一緒に昇降機に乗って二階の小宴会場に上った。食卓の両端に井谷と五十嵐、片側に瀬越、房次郎夫人、房次郎、片側に瀬越と向い合って雪子、幸子、貞之助、―――昨日幸子が美容院で井谷から相談を受けた時の席順は、片側は瀬越の左右に房次郎夫婦、片側は雪子の左右に貞之助夫妻となっていたが、それでは改まるからと、幸子の提議で斯様に直して貰ったのである。―――と云う風に列んだ。> ![]() このロビーで、お互いの紹介がなされたようです。 現在の旧オリエンタルホテル跡地を訪ねました。 ![]() 行ってみると、海岸通りの向かい側に説明板がありました。 ![]() さて、次の野村との見合いは、雪子がオリエンタルホテルを嫌ったため、トーアホテルで待ち合わせとなります。 <幸子は、ちょうど貞之助が帰宅したので、夫とも話し合った結果、矢張雪子の心持を尊重した方がよいと云うことになり、強情を張るようで済まないけれども、………と、押し返して先方へ譲歩を求めると、では尚よく考えて、明朝改めて打ち合せをしましょう、と云う挨拶であったが、十五日の朝電話があり、トーアホテルでは如何と云って来たので、漸うそれに話が落ち着いた。> トーアホテルは明治41年に開業したドイツ系資本の高級ホテルで、稲垣足穂の『星を造る人』にも登場します。 ![]() 上の写真は、雪子たちが落ち合ったトーアホテルのロビーです。 ![]() 昭和12年の地図です。トアロードの北の突き当りのところ(黄線)にトアロードと記されています。 ![]() 現在その跡地には、神戸外国倶楽部が建っています。 このように、『細雪』に登場する建物はほとんど現存せず、風景も大きく変わりましたが、昔の地図を見ながらそこに行ってみると、当時の優雅な生活を思い浮かべることができるのです。
by seitar0
| 2020-06-03 22:35
| 谷崎潤一郎
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