神戸カフェパウリスタの写真

　カフェパウリスタは、ブラジル移民の父と呼ばれた水野龍が明治44年、東京に白亜三階建の洋館「銀座 カフェーパウリスタ」で創業し、大正時代には文化活動の一拠点となり、多くの文人が常連客となっていました。

　神戸支店ができたのは、大正2年、トアロードの国鉄の踏切を下がった先、東南の角地で、そこには今東光ら関西学院の学生たちがよく通っていました。その後パウリスタは少し南に下がった三宮神社の北側に移転しています。

　現在そこに行ってみると、八階建ての「パウリスタビル」が建っています。

　中山岩太が昭和14年に撮影した連作『神戸風景』にカフェパウリスタが写った写真があり、西秋生は著書の『ハイカラ神戸幻視行』で「珈琲のくつろぎと刺激」と題して、詳しく説明しています。

＜コートをまとった洋装の女性が二人、連れ立って坂を下りてくる。一人はサングラスをかけていて、あるいは異人さんかもしれない。真正面に背山。画面右に連なる低層のビル群の一番手前に「アサヒビール」と縦に記したネオンサインがひときわ目立っている。四階建のそのビルは他にも広告看板を掲げる細長い四角い塔になっていたところに、「ブラジルコーヒ　パウリスタ」とある。仔細に見ると、先の麦酒銘柄の上に横書き「タスリ」とあるが、これは店舗名を右から左へ記した、その後半の三文字に違いない。＞

説明されている部分の拡大図です。縦に「ブラジルコーヒ　パウリスタ」と書かれています。

トアロードとカフェパウリスタを鳥観図的に見おろした写真がありました。

この写真を見ると、三宮神社の境内が、道を挟んですぐ南まで広がっていたことがわかります。

こちらは昔の三宮神社の図ですが、パウリスタは黄線で四角く囲ったところにあります。

Twitterで調べていると「わんこ」さんが、こんな写真を投稿されていました。

https://twitter.com/nonorins/status/812347802353156097

左側の写真は大正2年に開店した神戸支店だと思われます。

右側の3階建てのお店は、2017年4月3日の朝日新聞によると、「トアロード沿いにあったカフェパウリスタ神戸支店（神戸アーカイブ写真館から）とキャプションがついていましたが、どうみても移転後の上の写真の店とは違うのです。

ひょっとすると、こちらが移転前のカフェパウリスタだったのでしょうか。こんな立派な建物があったら新築移転する必要はなかったように思いますが、確かに看板には「カフェパウリスタ」と表示されています。

謎は深まります。