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昭和28年 東工大卒。東芝に入社し、数々の技術賞を受賞しながらも、在籍中から文学評論の活動を行い、昭和36年には多摩美術大学に移り、当初自然科学の講座を担当し、やがて『太宰治論』により文芸評論家として遇されていたため文学の講座に集中し、多摩美大の名誉教授になられています。 『文学における原風景』では、文学者の作品には、そのイメージやモチーフを支える母体としての自己形成空間が色濃く投影されているとし、文学を支える風土や原体験を日本民族の歴史にまで結び付けて論じています。 東京に生まれの奥野健夫は、大都市の生活には地縁的共同体意識はなく、仮の生活空間という性格を持っている都市空間は、郷土と呼べないとし、 <故郷を持たない、つまり風土性豊かな自己形成空間を持たない大都会育ちのぼくは、強烈な“原風景”を内部に蔵している故郷のある地方出身の文学者たちにながい間絶望的な善望と嫉妬を感じて来た。>と述べています。 そして、以前は故郷を意識することがなく、また風土、風景にも関心を持つことが少なかった奥野健夫は、各地を旅行し文学者の故郷や文学作品の舞台を直接訪れるようになり、 <“名作の旅”とか“文学散歩”とかいう趣味的な観点とは違う強烈な感銘を風土、風景におぼえはじめた。文学者の思想や気質や美意識、文学作品の基調となっている作者の内的イメージ、深層意識は、その風土や風景と密接にかかわりあっている。> としています。 また原風景の形成時期については、まず幼少年期と思春期にあるとし、 <このような文学の母胎でもある“原風景”は、その作家の幼少年期と思春期とに形成されるように思われる。生まれてからと七、八歳頃までの父母や家の中や遊び場や家族や友達などの環境によって無意識のうちに形成され、深層意識の中に固着する“原風景”、それは後年になればなるほど不思議ななつかしさを持って思い出され、若い頃にはわからなかった繰返されるその風景やイメージの意味が次第にわかるようになってくる。> 次に二十歳前後の人格形成期をあげています。 <もうひとつは二十歳前後のもっとも感受性が強い人格形成期に受ける衝撃的な原体験や感銘によってつくられる“原風景”である。> 「キョウコ・モリ」 奥野健夫は、 <“原風景”は作家によって説明的、直接的に描かれない。しかしその作家の書くものに“原風景”は色濃く投影されている。>としていますが、上記の作家は私小説的作品やエッセイで、幼少年期、思春期、人格形成期における生活環境、家族や友人との関係、衝撃的な原体験について自ら述べており、作品への影響がよく理解できます。 一度彼らが生きた時代の「文学における原風景」を整理してみたいと思っています。
by seitar0
| 2019-10-29 09:37
| 須賀敦子
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