1980年代の西宮北口駅付近（岡原翔『テイクオフ』）

　今や利便性や環境の良さが評価され、「住みたい街ランキング」でトップの西宮北口ですが、1980年代の街の様子が、岡原翔『テイクオフ』に描かれていました。

主人公・正則は東京で就職を希望する会社の役員面接を受け、内定をもらい、高校時代通っていた西宮北口の塾の先生に挨拶に向かいます。

＜突然の訪問だが、今は夏季講習の期間だから、金光も夕方には時間が空いているだろうと思いつつ正則は、西宮北口駅北東口の自動改札機に、阪急電鉄から支給されている乗車証を入れた。駅を出ると西宮北口市場が目に入る。いつも買い物客で混雑していた市場も、今はさびれている。＞

現在はACT西宮東館となっていますが、震災前はここに西宮北口市場、新西宮北口市場があり、店舗数は約２２０もあったそうです。

上の写真は1959年頃の、まだまだ北口市場が賑わっていたころの写真です。

1980年の住宅地図を見ると、まだ多くの店舗があります。

＜線路に沿った細い道を進むと、闇市の名残のようなみすぼらしい一杯飲み屋、塾が戦後すぐの頃、英会話と英文タイプの学校として開講した当時の木造二階建ての建物が蹲っている。そこから道は左へカーブし、阪急神戸線の穴倉のようなガードをくぐった道と合流する。＞

正則が高校時代通っていた塾とは、どうも立聖館学院のことのようです。（最初の住宅地図の赤線で囲ったところ）

1961年の住宅地図を見ると、黄色の線で囲んだところに小さな立聖館学院がありましたので、ここが戦後英会話と英文タイプの学校として創立された場所なのでしょう。その後周りの土地も手に入れ大きくなったようですが、現在は無くなっています。

＜阪神間は海と山が近い。塾の一号館の五階から北を見ると、六甲山系を背景に甲山のこんもりとした姿が見える。甲山の麓には正則の住む目神山、手前の上ヶ原の丘には、関西学院大学や神戸女学院大学のヨーロッパ風の学舎が望まれる。丘陵の麓から西宮北口へ向けてゆるやかに下り、そこから三キロあまり南で大阪湾に落ち込んでいる。＞

西宮北口の高層ビルから見ると、甲山が小さく見えています。

この辺りの懐かしい風景、岡原翔さんは、うまく描いていました。